信じられん出来事。

復帰してから、自分の研究テーマで扱う実験の1番大事なアッセイが、どうして上手くいかないのか検証していた。上手くいったのは、研究室に来て初めてやった回のみ。原因として目をつけていた現象があったのだが、とある実験をして、その現象や自分の体調が悪かったことは原因ではないと気がついたのが復帰して二ヶ月後のこと。
最後に考えられることとして残ったのが、細胞のトランスフェクション方法が最適でない、ということだった。そもそも、トランスフェクションすること自体で細胞が大量死(それくらい死んでも普通、とか言われたら初心者には分からないというのがポイントだが)するし、同じアッセイを行い充分な結果を出している他のグループと比較し、トランスフェクション効率が上がるからという理由で五倍量ものプラスミドを消費することになっている辺りが怪しかった。・・・初めてやった回が上手くいったように見え、その手順に間違いがないと思っていたため、その結論に辿り着くのに時間を要してしまったが。
始めは、用いているトランスフェクション試薬がそのアッセイに最適なものではないかも知れないと考え、同じアッセイを行っているグループの論文をひたすら読み、特定の会社の特定のトランスフェクション試薬を使わないといけない、という拘束はないことが分かった。まだ、ここではプロトコル自体が間違っているなんて思いもしなかった。何故なら、それを自分に教えたポスドク達、テクニシャンも同じ方法でトランスフェクション試薬を日常的に使っているし、また書くけど、初回が上手くいったように見えたから。しかし、消去法で、プロトコルに問題があるとしか思えないところまで到達したのだった。
取りあえず、他のグループが用いている試薬のマニュアルを読み、原理とトランスフェクション方法を比較し、二種類あることを学び、両者の違いと、というか両者がはっきり違うということを知り、自分の試薬がどちらに属するのか調べた。
それで初めて、自分が習った方法(及び前任者とその前任者を教えた今は居ないポスドクと、現在うちのラボのヒト達が用いている方法)が劇的に間違っていることが発覚。
その、前任者がついていたポスドクが両者の原理を混同し、訳の分からないハイブリッド的なプロトコルを作り、それを勉強不足のポスドク達が盲目的に信じ込んで使っているらしい。それを自分も教わったのだ。
結論として、そのプロトコルに従うと、マニュアルで殆どの細胞種において最適とされている試薬とプラスミド量では、トランスフェクション効率が非常に悪くなるため、それを向上させるために倍以上の試薬とプラスミドを消費することになる。そして、必要ない培地交換のステップが入り、既に試薬の毒性に参っている細胞に乾燥ストレスがかかることで、細胞がこれ以上ないくらいのダメージを受けるのだ。
そのハイブリッドプロトコルができた理由が、前任者の実験ノートにメモってあった。アホらし過ぎて、ここには書かない。まず、試薬のプロトコルを読んでいない、動物細胞へのトランスフェクション原理がちっとも分かっていないことがバレバレ。あげくの果てには算数すらできていない・・・
前任者はついていたポスドクに言われたことをメモ書きしたのだろう。そして、そのポスドクはこの研究室にずいぶん前から、かなり長い間いたはず。そう考えると、この研究室の構成員の頭のレベルが当初から非常にアレだったことになる・・・「悪い」という意味ではなく、研究活動を行う上で頭がアレなのだ。そして、こんなアレなポスドク達を信用しているボス。アレなポスドク達を信用しろと言ってくるボス。
姉さんはもうとある人物を除いて、この研究室のメンバー全員が信用できなくなった。この人達、コミュニケーション不足の塊だし、実験原理も分からないヒトが大半を占める、何がしたいのか分からない集団ですよ。実験機器の使い方や、他のメンバーに対する配慮は、アメリカのラボ(平均的な。)をしのぐ悪さだし。学部の時にお世話になった助手たちがいたら激怒するだろう。
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結局、この研究室に来て、必要なディスカッションが周囲とできたか?テクニカルな疑問に答えてもらえたか?というか、基本的な実験の指導をしてもらったか?
答えは全部Noだ。分野外の准教授に時々超基本的なことを教えてもらいにいっているだけだ・・・
おまけに、前任者もそのポスドクもちゃんと論文読んでないし、そのアッセイ系が、数10年で大分改良された背景みたいなのも理解してなかったんだ・・・論文にaccording to the manufacturer’s procedureとか書いている人達が、実はそのprocedureってやつを読んだことが無く、それに従って実験を行っていなかった・・・こんなことを考えていたら、しばし放心状態に。
まぁ、bright sideもありますが。
1つは、時間切れになる前に、間違いが分かったこと。
2つ目は、ラボに来た時よりは、細胞への遺伝子導入(原理が、というわけではなく、英語で言えばfamiliar withと言う感覚)について知っていて、マニュアルを読んだ時に試薬の種類とその使い方の違いについてすぐに想像でき、理解できたこと。実は、ラボに来たばかりの時にマニュアルを読んだのだが、いまいち理解できなかったのでポスドクが言うことを信じてしまったのだ。
3つ目は、先行研究結果をムシできること。
で、学習したことは
・ポスドクの言うことは全て聞き流す(まともなことは言ってこない。議論をする時間も無駄。)
・このボスはもう手遅れだから、軽くあしらわないといけない。
・知らない、もしくは知っているような気がしても新しい試薬を使う時はマニュアルをまず読む。理解できなかったら、理解できるヒトを探し当て(たとえ他の研究室を当たらなければならなくとも)、説明してもらう。
・まずはマニュアル通りに試薬を使う。最適化もマニュアルに従って行う。(マニュアルに固執しすぎ、って思うかも知れないけど、初回はマニュアルに固執しておかないと、何か上手くいかなくなった時にトラブルシューティングができません。ていうか、この研究室のポスドク達のように、上手くいっていないことすら気が付かないなんてことになり得るのです。)
はい。沢山ありました。
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この研究室に来て、初めてマニュアル通りに試薬を使って行ったアッセイ。トランスフェクション効率はフツーに高く、細胞は最適な状態の時にトランスフェクションしてあげれば、殆ど死なない・・・!これなら結果にブレは殆ど生じないはずである。今までどれだけの時間とリソースを無駄にしたのだろう。
自分の実験結果を一通り整理してから、ポスドク達の間違いを指摘するか。
でも、こんなショックな出来事があっても、そのショックに浸るのは一日で済んだな・・・今までで最短の記録。慣れたのだと思う、このような状況に。タイターが高いコンピテントセルを調製しようとするだけで、ポスドク達に「そんなことする必要あるの?」と言わんばかりの白い目で見られるのだから。「いいですよ、別に。コンストラクションの時とか長い断片のTA cloningの時に、コロニーが出なくても知りませんからね」と言ってやりたい。
そういえば、ラボマニュアルのコンピテントセル作成プロトコル(何年も前の博士学生によって作成されたらしい)も、無駄な作業が多く、慣れていないヒトがやったら、その作業量のせいでタイターが落ちそうなものだった。そういうのを見ても、やはりこの研究室は発足当時から・・・と思ってしまう。
で、あえて、コンピテントセルの件は指摘しないでおこうと思う。指摘して、また面倒なポスドクに絡まれるのに時間を費やすような余裕はもうないのだから。
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テクニカルな単語が多くて、何の話だかさっぱり分からなかった皆さんへ。姉さんが言いたかったのは、コックさんと呼ばれる人達が、味噌汁とごはんを自分で作れなかったら(その原理も分からなかったら)、応用系の料理は作れないし、実質コックさんじゃないよ、ということです。

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信じられん出来事。」への2件のフィードバック

  1. いもさん の発言:

    SECRET: 1
    PASS: ec68caa5a9bb38a16e524ef9b7339820
    こんにちは。
    つくばのいも子さんです、私のこと覚えていらっしゃるかしら。
    実はBodyというのがコメントを書き込める所だというのに今日になってやっと気が付いたので、記念カキコです。
    アメリカに行くことや日本での大変な生活、応援しています(短く言うとこうなるわ。)
    ではまたそのうち。

    いいね

  2. 虫とり姉さん の発言:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いもさん!覚えていますともー。応援してくれてありがとう。いもさんは今何してるのかしら。そのうち会いましょ。

    いいね

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